平成17年から環境保護を目的として始まった「クールビズ」。
夏場のビジネスシーンを可能な限りエネルギーを使用せず快適に過ごすために、スーツの上着を脱ごうとか、ノーネクタイで半袖のワイシャツを着ようとか、様々な工夫をしてゆこうということで推奨されています。
もちろん、冷房の設定温度も可能な限り節約になるよう「28度」という推奨温度も存在します。でも、28度なんてとんでもない……26度でも暑いのに! と、そう感じることも多いはず。
実はこの28度、あくまでも節約のための「目安」であり、通常、建物内で衛生を確保するために推奨される室温である「18度~28度」の上限数値。
この数値の幅を見る限り、28度は当然として、そこに近い26度でも暑いと感じる人がいても、それは当たり前のことなのです。
「でも、26度よりも下げたりしたらエコにならないし……」と罪悪感を抱いてしまう場合は、温度は26度設定のまま、もう一工夫してしまうことをオススメします。
その工夫とは、湿度を下げること。そして、カーテンやブラインドを閉めて窓からの日光を遮ったり、さらに扇風機やサーキュレーターを使用して室内の空気を循環させたりすること。
そうすることで、同じ26度という室温でも、これまでより快適に過ごすことができるようになるのです。
エアコンの設定温度25度は涼しい?やっぱり快適なのは26度が良い!?
エアコンの雄であるメーカー、ダイキンによると快適のオススメとは、
- 温度:26~28度
- 湿度:50%以下
となるそうです。
ただし人が多いオフィスの場合は人の流れや出入りによる室温の変動があることも多く、26度よりも下げて設定している場合も多いようですね。
試しにそんな状況での「25度」という設定を考えてみます。
実際に夏場の蒸し蒸しと暑い外回りなどの外出から戻ってきて、ひんやりとしたオフィスの空気に包まれる瞬間のたまらない心地良さを感じた経験がある人も多いことと思います。
でも、ずっと室内勤務している人にとって25度は「ちょっと寒い」と感じてもおかしくはない温度。おそらく薄手の上着を手放せなくなっている人が出てくる室温です。
ですからこの場合は、ちょっと冷え方がゆるいかなと思う人が出てきたとしても、設定温度を25度から26度に上げて、除湿をする、あるいは必要に応じて扇風機などを併用するようにした方が、全員がより快適に過ごせると考えられますね。
冷房の温度を1度上げることで、約12~13%の節電にもなるそうですし、エコという観点からもその方が望ましいのではないかと思うのです。
エアコンの設定温度24度にするのは時と場合で温度を下げる必要がある!?
24度とは、例えば東京を基準として5月~7月、8月末~9月頃、つまり盛夏の前後となる初夏や初秋の頃の気温と同じです。
時期としては、夏本番前のワクワク感があったり、夏後の秋風がちょっと吹いてきたりするかなという頃ですから、普通だと、カーディガンなどのちょっと羽織るものが欲しいかなという人が出てくるような温度ですね。
ですからさすがにここまで設定温度を下げてしまうと、例えば湿度が40~70%ほどある場合でもデスクワークのオフィスでは「涼しい」「寒い」と感じる人も多くなります。
エコという観点ではあまり望まれない設定温度であることは確かです。
室温を24度設定にする場合というのは、例えばその職場が調理を行うなどするような場所や飲食店、あるいは人が絶え間なく動くような作業をするような場所。またそれとは別に、建物の構造としてお洒落な全面ガラス張りの一面があったりして、日光を遮ることができない場合などが考えられます。
火を使ったり人が動いて体温が上がったり、直射日光が当たったりなどすれば室温もそれだけ上がりますから、その分エアコンの効きを強くするため、という意味で24度やそれ以下という設定にする必要があったりもするのです。
まとめ
最初に、『通常、建物内で衛生を確保するための室温である「18度~28度」』という内容を書きました。
実はこれは、建築物衛生法における空気調和設備、つまり建物の中でエアコンや空気清浄機を使用する場合の年間を通した温度の目安からひいたもの。
(※参照:厚生労働省:建築物環境衛生管理基準について
URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
これによると、令和4年4月1日以前にはオフィスなど事務所内での衛生基準となる室温は「17℃以上28℃以下」、それ以降は「18℃以上28℃以下」と定められています。
もちろん定められているのは室温だけではありませんが、とにかく温度としてはこれを守ることで「高い水準の快適な環境」を保つ目安となる基準として使用しました。
しかし、ここでもうひとつ面白い実験結果がありますのでご紹介します。
理化学研究所とダイキン工業株式会社の共同研究で、室温や湿度を調節した様々な環境下で課題を与えた被験者に、体感温度や不快感・疲労感をどのように感じたかを調査したものです。
(※参照:DAIKIN:室温28℃でも湿度を下げれば疲労軽減に有効であることを実証
URL:https://www.daikin.co.jp/press/2020/20200528
こちらの結果を見てみると、「暑い・涼しい」と感じる境界や、不快感や疲労感についても、湿度に左右されながらも「28度」という温度を境目に快と不快が分かれているのがわかります。
こうして見てみると、クールビズで推奨された「28度」も暑い暑いとばかり思っていましたが、案外根拠のある数字だったのかもしれませんね。
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