「猋」を読めますか?
3匹の犬が組体操をしているみたいな漢字です。
ふだん使われているのを見ることはあんまりなくて、難しい漢字のクイズとかに出てきそうですね。
でも、聞いたことがある言葉なんですよ。
答えは、「つむじかぜ」です。
パッと見ると「森」という漢字に似ているから、木ではなくて「犬がたくさんいるのかな?」と、私は考えてしまいました。
「犬なのに風のことなの!?」とちょっとびっくりですよね。
そこで「猋」の読み方から、知っているとおもしろい漢字の豆知識をご紹介します。
犬3つでなんて読み方なのか?この漢字ができた由来と意味とは!?
「犬」を三角の形に並べた「猋」は、なかなか目にする機会がないですが、おもしろい見た目をした漢字ですよね。
訓読みで「つむじかぜ」、音読みだと「ヒョウ」と読みます。
つむじかぜは、グルグルと渦を巻いて、激しく吹き上げる風のことです。
運動会の最中に、突然グラウンドで巻き起こった映像をニュースで見たことがありませんか?
珍しい言葉ではないですよね。
でも、「犬」という字から「風」は想像しにくいように思います。
昔の人は、犬が走っている姿を「風のように速い」と連想したんです。
昔の辞典にも載っています。
平安時代にできた、日本でいちばん古い漢字辞典があるんですが、その説明には「群犬走」と書かれていますよ。
意味は「群れながら犬が走っている様子」です。
実際、犬がどれぐらい速いのかというと、平均的な走る速度は時速30kmくらいです。
種類によってはさらに速く走れますよ。
狩猟犬だと、獲物を追いかけるため走るのが得意ですから、時速50kmを超える速さで走れるんです。
風の速度にしたら、風速10~15mくらいになります。
「それってどれくらい強い風なの?」と思いますよね。
向かい風だと歩きにくいと感じるくらいの、ちょっと強めの風です。
傘をさすのが難しいくらい強いんですよ。
(気象庁「風速の目安」: https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html )
たくさんの犬が、すぐ近くを全速力で駆けていくのを想像してみてください。
土ぼこりが舞って、風に少しあおられる感じがしそうですよね。
たくさんの犬がグルグルと追い掛け回りながら、ものすごい速さで走っていくのを見て、「つむじかぜ」という漢字になったんですね。
さて「猋る」と書くと「はしる」と読むんです。
語源から考えれば、なるほどと納得できますよね。
他にも動物を使った文字がありますよ。
「牛」「羊」「鹿」「馬」「人」を3つずつ重ねると次の意味になります。
- 犇く(ひしめく)…ギュウギュウと押し合いながら、ひとつの場所に集まっていること
- 羴い(なまぐさい)…羊の生ぐさいにおいがすること
- 麤い(あらい)…鹿がちょっと間隔をあけて群れるのから、きめがあらいこと
- 驫く(とどろく)…馬が大きな音を鳴らしながら駆けること
- 众い(おおい)…人がたくさん集まっていること
身近な動物が使われているので、それなら「猫は?鳥は?」と思って調べましたが、どうやらないみたいです。
動物以外の漢字だと、まだまだたくさんあるので調べてみるとおもしろいですね。
音読みでは「ヒョウ」と読みますが、「豹(ヒョウ)」を思い浮かべてしまいませんか?
どちらも動物の漢字で、同じ読み方だけど関係はないんです。
でも、犬が3匹集まると「豹」になるなんて考え方も面白いですよね。
「猋」の読み方と語源、そして同じ作り方の漢字をご紹介しました。
「つむじかぜ」と同じ読み方をする他の漢字もあるので、次でお話しますね。
犬3つに風で「飆」という漢字がある!その由来と意味とは!?
「猋風」は「ヒョウフウ」と読みますが、くっつけてひとつになった漢字もあります。
犬を3つと風で「飆」です。
右と左を入れ替えて「飇」と書くこともできますよ。
どちらも意味と読み方は「つむじかぜ」で、「ヒョウ」と音読みすることもできます。
そもそも「つむじかぜ」と読む漢字は、他にいろいろあるんですよ。
よく見かけて、よく使われているのは「旋風」で、「センプウ」と読むこともあります。
さらに「飄」「飃」「飈」「颶」「飄風」と、ぜんぶ「つむじかぜ」です。
同じ読み方で、同じ意味なのに違う漢字がたくさんあるのは「どうして?」と疑問に思いますよね。
それぞれの漢字ができた時期や使い始めた人、場面がバラバラだったので、ひとつの読み方にいろいろな漢字があてられたんです。
日本の漢字は、もともとは中国から伝わったものですが、日本人が使いやすいように変化させたり、組み合わせて新しく作ったりしてきました。
「飆」は走る犬のように「速い風」を語源としていますが、「飄」は「ただよう、ひるがえる」の意味もあって、風が吹き上がるイメージです。
「飈」は風の強さだけでなく「熱さ」を感じさせますし、「颶」は台風のように「大きなつむじかぜ」の意味があります。
広く捉えると、どれも同じ「つむじかぜ」の意味です。
組み合わせ方を変えても、読み方も意味も変わらないなんて、漢字はつくづく不思議な文字ですよね。
知らなくても困らない知識ですが、知っているとおもしろい雑学ですね。
まとめ
犬が3つで「つむじかぜ」と読む漢字を解説しました。
思いもよらない読み方でびっくりしますが、漢字は不思議で、奥が深いですよね。
ふだんの生活では使わない難しい字でも、読み方や意味を調べるとおもしろいルーツがわかって、だれかに話したくなります。
漢字の雑学を知って、楽しんでみると良いですね。
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